top of page

ここにタイトル

2023年3月21日

小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈げんとうです。

つうと銀のいろの腹をひるがえして、一疋の魚が頭の上を過ぎて行きました。


『クラムボンは死んだよ。』


『クラムボンは殺されたよ。』


『クラムボンは死んでしまったよ………。』


『殺されたよ。』


『それならなぜ殺された。』兄さんの蟹は、その右側の四本の脚あしの中の二本を、弟の平べったい頭にのせながら云いいました。


『わからない。』


 魚がまたツウと戻もどって下流のほうへ行きました。


『クラムボンはわらったよ。』


『わらった。』


 にわかにパッと明るくなり、日光の黄金きんは夢ゆめのように水の中に降って来ました。

bottom of page